32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/12(日) 14:34:10.07 ID:QTuosFNF0
ζ(゚−゚;ζ

うう、苛々する。

なんて子供だ。
下手な大人よりも頑丈な意思を持っている。

こうなれば、周りの人間から壊していくしか無いか。

神にも、思い通りにいかないことがあるのは知っていた。
でも、人間ごときに、阻まれるというこの異常さに、私は不快感を感じた。


父親は、もう限界のようだ。

となると、あの表情一つ崩さない――



祖父か。

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33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/12(日) 14:38:13.25 ID:QTuosFNF0
/ ,' 3

余命は、あと2週間をきった。

ワシには、この子の死しか見えておらん。

つい昨日、しぃが目を覚ました。
起きたしぃを見てみると、目が変わっていた。

物理的ではない。論理的に。

なんじゃろう。まるで―――

世界の理を全て知った、

賢者のような。

または、



死を見据えているような。そんな目。

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34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/12(日) 14:40:56.35 ID:QTuosFNF0
ζ(゚ー゚*ζ

老人は、相変わらず部屋の隅の椅子に座っている。
視線の先には、孫がいる。

この老人は、すでに孫の死を受け入れているかのようだ。
深く刻まれた皺に、そう記されているような気がした。

さて、今夜あたり、老人の潜在意識に潜り込んで、揺すってみよう。

また、面白い光景が見られるかもしれない。

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36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/12(日) 14:47:44.07 ID:QTuosFNF0
潜在意識の中に入り込んでみた。

この老人の潜在意識は、激しく入り組んでいる。
喩えるならば、迷宮のような空間。

子供のように平原が続くわけでもなく、
大人のように建物が立ち並ぶわけでもない。

迷宮だ。

ζ(゚ー゚*ζ「どこ、かしら」

迷宮の奥へと突き進んでいく。
無機質な色の壁が続く。

しばらく行くと、なぜか老人は出迎えに来た。

/ ,' 3「なんじゃ、久しぶりのお客さんじゃの」

ζ(゚ー゚*ζ「あら、何の疑いもなく出迎えていいの?」

/ ,' 3「構わんよ。別に入られてどうということはない」

ζ(゚ー゚*ζ「私は――」

/ ,' 3「神様じゃろ?分かるわい」

なかなかに鋭い。
私は早いところゆすぶりをかけることにした。

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/12(日) 14:52:16.76 ID:QTuosFNF0
/ ,' 3「老人に揺すぶりなんてするもんじゃないぞ」

ζ(゚ー゚;ζ!!

/ ,' 3「お前はワシにしぃの死を教えにきたんじゃろう?
   分かりきっとるよ。前にも来たからの。お前みたいのが」

この老人、異常なまでに鋭い。

/ ,' 3「なあ神様よ。この老いぼれの願いを叶えるだけの力があるなら、聞いておくれ」

ζ(゚ー゚*ζ「ええ、どうぞ」

/ ,' 3「あの子を助けてくれ」

ζ(゚ー゚*ζ「無理ね」

/ ,' 3「じゃろうの」

老人は、初めから答えを知っていたかのように言った。
この老人は、一体何者か。

ζ(゚ー゚*ζ「あなた、何者?」

/ ,' 3「一端の人間じゃい」

つかみ所がない。
39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/12(日) 14:56:36.17 ID:QTuosFNF0
ζ(゚ー゚*ζ「っ!」

私はすこし、横暴な手段に出た。
軽く私の後ろの壁を破壊したのだ。

/ ,' 3「タ・・・・・・・」

ζ(゚ー゚*ζ?

/ ,' 3「タタリじゃあああああああああああああああああああああああ!!!!」

ζ(゚ー゚*ζ「いやタタリじゃないわ。あ、でも私は良い神様じゃないし、あれ?」

/ ,' 3「冗談じゃ」

ζ(゚ー゚#ζ

このジジイ。
神を馬鹿にしているのか。

ああ、もう!
最近不可解が多すぎる!

/ ,' 3「どうせ貴様は、しぃの心も揺さぶりにいったんじゃろ?」

ζ(゚ー゚*ζ「あんた何処まで見透かしてるの?」

/ ,' 3「あの子は、強い子じゃ。死を恐れるような子じゃないわい」

ζ(゚−゚*ζ「・・・・・・・」
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/12(日) 14:59:33.55 ID:QTuosFNF0
ζ(゚−゚#ζ

ああ、ここからも愛情の悪臭が!

くそっ!くそっ!

なぜこうも上手くいかないのだ。

何かがおかしい。

なんで、この期に及んでそんな余裕があるのか!?


私は、このジジイの潜在意識からも、離脱した。

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43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/12(日) 15:02:07.69 ID:QTuosFNF0
/ ,' 3

余命、しぃの、余命。

もう、残り数日じゃ。

神様。

5年という短い間では、

この子に幸せを教えてやれません。

どうかこの子に、

幸せを、与えてやってください。

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44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/12(日) 15:06:21.73 ID:QTuosFNF0
ζ(゚ー゚*ζ

私は、というと、下界から天上に帰ってきていた。

下界に面白いことを探しにいったのに、ああも上手くいかないとは。
ああ、苛々する。

川*゚ ー゚)

だというのにこの変神は・・・
妬ましい!くそっ!

そう思っていると、クーは、下界へ向かった。

ふん、下界に面白いことなんてないよ、と言ってみるものの、
やはり気になってしまうもので、私は下界を覗いてみた。

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45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/12(日) 15:11:12.39 ID:QTuosFNF0
ζ(゚−゚*ζ「何よまったく。あいつばかり楽しそうでずるいじゃない」

クーはというと、下界の『公園』と呼ばれるところで、人間と話していた。
嫉妬深い私は、お約束のようにツメを噛んでいた。

ζ(゚−゚#ζ「ちっ!」

太い人間が、クーと話している。
クーは楽しそうに笑っている。
・・・・というか異常なほどにテンションが上がっている。

羨ましい、なんて感情を抱いてしまった。
悔しい。

クーと話していた太い人間が去っていき、また一人、ベンチの方へと歩いてきた。

アレは―――この間の。


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47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/12(日) 15:12:43.51 ID:QTuosFNF0
/ ,' 3

ワシは荒巻という。
下の名前なぞ言っても仕方の無いことじゃ。

ワシには二人の孫がおる。
10歳と5歳じゃ。可愛い盛りじゃよ。
言ってみりゃ、孫の存在がワシの幸せさね。

その孫、下のほうがの、今幼稚園のプールに行っとるんじゃよ。
プールには、入れんがの。

単純に言わせてもらう。
下の孫が白血病じゃ。

もう手遅れじゃ。どうこうしようとも思っとらん。
じゃが、孫を最後に喜ばせてやりたいものよ。

自称孫思いの、爺としては、の。

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48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/12(日) 15:18:13.41 ID:QTuosFNF0
『荒巻』。
彼はそう名乗った。

間違いない。あのジジイだ。

なにやらクーは荒巻と話している。
それも親身になって。
このときばかりは、私の悪心ぶりが自分でも分かったような気がする。

クーの意思は、空を飛んでいく。
私はそれを目で追った。

行き先は、『VIP幼稚園』。子供が通う、学舎のようなものだ。
その行き先を、目を凝らして見てみる。

(*゚ー゚)

この間の子供だ。
安らかに、眠っている。

近くには水を張った池のようなもの。俗に言うプールというやつである。

なるほど。あのジジイ、クーに助けを求めたか。

面白い。ちょっと邪魔してやる。

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49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/12(日) 15:25:01.68 ID:QTuosFNF0
クーの意思はしぃの身体から飛び去り、戻って行った。
それを見送ってから、私は暫く観察する。

(*゚ー゚)パチッ

目を開いた。

そして、

(*゚ー゚)「ぼく、もうしぬかもしれないけど、
    さいごのいちにちを、ぱぱとままと、じぃじとおにいちゃんといたい!」

そう言った。

この子は、何故こんなに強いのか。

「わかった!海にいくぞ!しぃ!」

今まで目立たなかった父親が、そう言った。

何故だろう?もう死ぬというこの子供に、なぜそこまで愛情を注ぐのか。
わからない。

家族は車で――もちろん、先ほどのジジイも乗せて――海へと向かった。

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52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/12(日) 15:31:57.07 ID:QTuosFNF0
ζ(゚ー゚*ζ

私はというと、またしぃの潜在意識に潜り込んでいた。
車の中で眠りこんでいたので、入り込むのは容易かった。

(*゚ー゚)「きたね!かみさま!」

ζ(゚−゚*ζ「何で?何で貴女は怖くないの?」

(*゚ー゚)「こわくないわけじゃないよ!
    ぼくだってこわいんだよ!」

ζ(゚−゚*ζ「じゃあどうして、貴女は死を受け入れるというの?」

(*゚ー゚)「だって――」

(*゚ー゚)「ぼくは、ぱぱとままのこだから!!
     おにいちゃんのいもうとだから!!」

ζ(゚ー゚*ζ「そんなこt」

(*゚ー゚)「それとじぃじのまごだからっ!!」

ζ(゚−゚*ζ!

この子は、強い。

恐らくクーも、苦労したはず。
この子を理解するのに。

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/12(日) 15:34:54.93 ID:QTuosFNF0
ε=ζ(゚ー゚*ζフー

仕方ない。
私もここは一肌脱いで

悪神改め―――


この子を、守ってあげますか。


ζ(゚ー゚*ζ「あなたは、強い子ね」

(*゚ー゚)「うん!ぼくはつよいよ!」

ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ、この一日が終わるまで、私が守ってあげる」

(*゚ー゚)「あ、さっきのかみさまみたいだ!」

ζ(゚ー゚*ζ「私だって神だもの。似てるかも知れないわ」

(*゚ー゚)「ありがとうね!かみさま!!」

ζ(゚ー゚*ζ

私は照れくさくなって、この空間から素早く抜け出した。

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54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/12(日) 15:38:35.15 ID:QTuosFNF0
/ ,' 3

しぃは、すうすうと寝息を立てている。

少し前までの、死んだような寝息ではない。
なんというか、健康的じゃ。

ワシはどうやら、一度に神を2回使ってしまったらしい。
さっきの抜けたねーちゃん神で、
もう一方は、恐らくあの巻き毛神だろう。

何はともあれ、神様、感謝するわい。

後は、ワシらが、この子に幸せを教えてやるからの。

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