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(´・ω・`)ショボンが悪夢を見るようです
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 21:18:54.18 ID:YFKrH/cs0



Q 夢と現実の境界線って、どこにあると思う?





2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 21:20:20.02 ID:YFKrH/cs0

(´・ω・`)「……ん、頭痛い」

目覚めと同時に襲いくる頭痛に、僕は思わず悲鳴を上げた。
カーテンの隙間から射し込む光に目をすぼめながら、額に手を持っていく。

ここ数日、どうにも寝起きが良くなかった。
ベッドの上で起こした体は嫌な汗を滲ませ、軽くはない頭痛が僕を襲う。
寝起きの倦怠感とは違う意味で気分は沈み、油を差し忘れたブリキ細工のように体が重い。

時計を見ると七時半を過ぎていた。

僕の両親は共働き、父親は単身赴任で他県に住んでいる。母親は忙しい人で、当然朝も早い。
この時間だと、そろそろ――、

J( 'ー`)し「ショボン! もう七時半よ! 起きてるの?」

(´・ω・`)「……はぁい」

ドアの外から掛けられた声に、気怠い返事を返す。
それから自分に対して気合いを入れ、立ち上がる。


3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 21:22:09.36 ID:YFKrH/cs0

(´・ω・`)「さて、と」

呟いて部屋を出、階段を下りて居間に入る。
母親はすでにスーツ姿、テーブルには二人分の朝食が用意してあった。

(´・ω・`)「おはよう、母さん」

J( 'ー`)し 「おはようショボン。早く食べなさい。学校、遅れるわ」

(´・ω・`)「うん。……ジョルジュは?」

椅子に座り、そう尋ねる。
母親は僕の言葉に、一瞬だけ表情を曇らせ、

J( 'ー`)し「知らないわ。声は掛けたけど」

(´・ω・`)「まだ起きてないの?」

J( 'ー`)し「知らないわ」

(´・ω・`)「……」

素っ気なく言い返すその態度に、僕は母親から見えないようにため息をこぼす。
ジョルジュは弟の名前。ここ一年ほど、母親と上手くいってない。

いつの間にか二人は、互いの存在を無視するようになっていた。
もちろんそれには理由があるし、僕はその理由を知っていたけど、
自分が仲介役になれないことも知っていた。


4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 21:23:28.24 ID:YFKrH/cs0

J( 'ー`)し「お母さん、今日はご飯食べてくるから」

そう声をかけられて、うつむいていた僕は顔を上げる。
さっきまでの無関心の仮面は姿を消し、優しい親の顔で母親は僕に言う。

J( 'ー`)し「晩ご飯、よろしくね」

(´・ω・`)「あ、うん」

J( 'ー`)し「ショボンが忙しい時期なのはわかってるけど……」

(´・ω・`)「いいよ、もう慣れたから」

J( 'ー`)し「ありがとう」

言って、母親は微笑んだ。

こんな朝は、最近では珍しい。
仕事が立て込んでいたのか、最近の母親は帰りも遅かったし、
文字通り時間に追われるようにして家を出る朝に、僕に向かって微笑みかけるような余裕はなかった。

こんな会話を交わしたのは久しぶりだった。
たぶん、機嫌がいいのだろう。
仕事の調子がいいのかもしれない。


5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 21:24:23.49 ID:YFKrH/cs0

J( 'ー`)し「それじゃあ、お母さん、もう行くから」

(´・ω・`)「うん」

J( 'ー`)し「勉強、頑張ってね」

(´・ω・`)「いってらっしゃい」

母親を笑顔で送り出し、それから僕は朝食を食べ始める。
学校までは歩いて二十分ほどかかるから、もうほとんど余裕はない。

五分ほどで食事を終え、身支度を整えて僕が家を出る時間になっても、ジョルジュは起きてこなかった。



6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 21:26:13.54 ID:YFKrH/cs0

(´・ω・`)「……今日も、嫌な夢だったな」

最近の僕は夢見が悪かった。
悪夢としか言い様のない夢に、毎晩うなされる。

それは夜だけにとどまらず、例えば学校の休み時間、
仮眠のつもりで眠りについても、悪夢は襲ってきた。

今の僕には、安眠なんてそれこそ夢のまた夢。
寝起きの頭痛も体調不良も、きっとそのせいだろうと思っていた。

僕はその夢の中で、人を殺していた。
相手は母親だったり、ジョルジュだったり……そして、僕の彼女であるツンだったり。

それは“夢の中で殺意を抱いた”程度のものではなく、僕は明らかな殺人行為に身を浸し、死という結果も見せつけられた。

起きた瞬間に僕を包むのは何とも言えない罪悪感で、最初の頃は現実の世界で三人と顔を合わせることさえ辛かった。


7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 21:28:14.12 ID:YFKrH/cs0

自分で自分を分析してみたことは何度もある。
これだけ鮮明で質の悪い夢なのだから……そしてもう何日も続いているのだから、
明確な理由があるはずだった。

僕の見つけた答えは簡単、この三人との人間関係は、今の僕にとってストレスだった。

家の中のぎくしゃくした空気は、もう半年以上続いている。
原因はジョルジュの高校受験。
学歴至上主義の両親は、当然のようにジョルジュをレベルの高い私立高校に入学させようとした。

だがジョルジュは中学三年になっても勉強に本腰を入れず、結局、仲の良い友達が選んだという理由で
中級クラスの公立高校に進学した。

今年大学受験を控えた僕の成績は上々で、母親からは期待、そして弟からは嫉妬の視線をぶつけられていた。

もう一人、彼女、ツンとのそれは……まぁ、簡単に言えば倦怠期なのだろうと思う。

原因もきっかけも曖昧なのに、いつの間にか顔を合わせることが辛くなっていた。
昔は潤滑油でもさしたように滑らかだった会話も、いつしか沈黙の占める割合が増え始めている。
毎日のように交わしていたパソコンでのメールも、ここ一ヶ月ほど受信していない。



8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 21:29:02.93 ID:YFKrH/cs0

(´・ω・`)「……馬鹿らしいな」

呟いて、僕は考え込みそうになる自分の意識を打ち切る。

結局、全てどこにでもあるような小さな悩み。
受験勉強でストレスが溜まっていたところに、いくつか悩みが重なってしまった、それだけのこと。

あの夢はストレスの相乗効果で、悪い感情ばかりが増幅されているだけ。
どうせ一過性のもので、すぐにおさまるだろう。

僕は自分にそう言い聞かせた。

もう何日も、同じように言い聞かせてきたことも忘れて。



9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 21:30:40.31 ID:YFKrH/cs0

( ・∀・)「なんか今日、夕方から雨になるらしいじゃん?」

(´・ω・`)「えっ、そうなの?」

放課後、僕は美術室にいた。
目の前にはキャンバス、僕の手には絵筆。
油絵の具の香りが僕を包むように漂う。

僕の右隣に座る友達が、背後の窓を振り向いて言った。

( ・∀・)「発達した梅雨前線が……みたいな、なんかそんなので。
     結構降るらしいぞ」

(´・ω・`)「まぁ、時期が時期だからね」

( ・∀・)「ショボンさぁ、傘とか持ってきてる?」

(´・ω・`)「折り畳みは一応」

答えながら、僕は彼にならって窓の外に目をやる。
空は一面雲に覆われていたが、まだ雲の色は白く明るい。
すぐにでも降り出す、という感じではない。


10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 21:32:00.11 ID:YFKrH/cs0

友達はそんな空を見て、だるそうに呟いた。

( ・∀・)「雨降ると乾きが悪くてなぁ」

(´・ω・`)「僕達、もう時間ないしね」

僕は美術部に所属していた。
現在、受験戦争真っ直中の僕に許された、唯一の気晴らしだ。
六月末が期限のコンクールがあり、それに出品して、美術部員としての僕の活動は一応終わる。

( ・∀・)「随分暗い感じの絵だな」

友達が僕の絵をのぞき込んで言った。

( ・∀・)「ダークだね、ダーク」

(´・ω・`)「そうかな……」

( ・∀・)「だってこの青とか……ほら、ここの赤なんて、ほとんど血じゃん?」

(´・ω・`)「……そんなつもりはないんだけどね」

友達の言葉と例の夢がリンクして、思わず苦笑する。

精神状態が絵に反映されることはよくあることだ。
だとしたらこの絵は僕の今の精神状態……あの夢と同じ、僕の心から派生した副産物、か。

精神科医がこれを見たら、どんな診断結果を出すのだろうと考えて、少し笑った。


11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 21:33:56.77 ID:YFKrH/cs0

(´・ω・`)「ちょっと、トイレいってくるね」

言って、僕は立ち上がる。
友達は僕を振り向き、

( ・∀・)「好きなだけゆきなさい。つれしょんは勘弁だが」

(´・ω・`)「うん、同感」

( ・∀・)「手はちゃんと拭けよー」

(´・ω・`)「一応言っておくけど、僕、高校生ね」


12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 21:34:05.87 ID:znHb/B490
sien

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 21:35:40.48 ID:YFKrH/cs0

脳天気にそんな言葉を交わして、僕は歩き出す。
さっさと用を足して、また絵に集中しよう……と思っていたのだが、

( ・∀・)「あ、おい、ショボン」

(´・ω・`)「えっ?」

背後から声をかけられる。
振り向くと、友達は呆れるように微笑み、

( ・∀・)「高校生がそんなことしてたらいかんぜー、ショボン君」

(´・ω・`)「はい? ……なんのこと?」

( ・∀・)「ほら、お前、ワイシャツに絵の――」

そこまで言ったところで、友達は言葉を止めた。
同時に、美術室にいた数人の部員が、手を止めて顔を上げる。

広い美術室に、規則的な電子音が響いていた。

携帯電話の着信音だ。


14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 21:37:18.12 ID:YFKrH/cs0

(;´・ω・`)「あ、ご、ごめん。僕だ」

僕は慌ててズボンのポケットから携帯電話を取り出す。
ディスプレイを確認すると……そこには、

( ・∀・)「ショボン? どうした?」

(´・ω・`)「……ごめん、ちょっと外出てるね」

( ・∀・)「なにかあったのか?」

(´・ω・`)「ちょっと、ね」

短くこたえて、僕は足早に美術室を出る。
トイレに向かって歩きながら、携帯電話を耳に当て、

(´・ω・`)「もしもし」

ξ゚听)ξ『やっと出た……ねぇ、出るの遅くない?』

(´・ω・`)「ごめん、美術室にいたから」

電波に乗って届いたツンの声は、聞いてそれとわかるほど不機嫌だった。


15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 21:39:05.88 ID:YFKrH/cs0

(´・ω・`)「どうしたの?」

人気のない男子トイレに入り、窓辺で外を眺めながら尋ねる。
ため息でもついたのか、ツンは短い間をおいて、

ξ゚听)ξ『今、学校にいるんでしょ?』

(´・ω・`)「うん」

ξ゚听)ξ『じゃあ、ちょっと出て来れない?』

(´・ω・`)「ツンも学校にいるの?」

ξ゚听)ξ『そう。話あるから、少し付き合って欲しいんだけど』

僕は腕時計に目を向ける。
午後四時半……部活に入っていないツンが学校に残っているにしては、遅い時間に思えた。


16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 21:40:10.98 ID:YFKrH/cs0

(´・ω・`)「今、どこ?」

僕はたずねる。
ツンはあまり感情の見えない声で、

ξ゚听)ξ『生徒玄関の前にいるから』

(´・ω・`)「わかった」

ξ゚听)ξ『早くしてよ』

(´・ω・`)「すぐ行くよ」

電話が切れる。
どこかぶっきらぼうな態度、言葉遣いは、気の強いツンらしいものだった。
ただ、今日の言葉はいつにも増して冷たかったような気がした。

しばらくまともに顔も合わせていないのだから、当然だろう。
僕は、そう考えることにした。

さっきより重みを増したような空に一度目を向けてから、トイレを出た。



17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 21:42:06.28 ID:YFKrH/cs0

ツンは僕を校舎の裏手に呼びだした。
そこはもう使えなくなったがらくたが置かれている場所で、
壊れた机や椅子、何に使ったのかもわからない廃材やコンクリートブロックが、無造作に散らばっていた。

(´・ω・`)「話って?」

僕は聞く。
ツンは少し間をおいてから振り返り、

ξ゚听)ξ「別れない?」

(´・ω・`)「え……」

その言葉を、僕は全く予期していなかった。

(´・ω・`)「別れる、って……」

そんなことは考えていなかった。
倦怠期の、その先にあるのが、別れ?
こんな問題は時間が解決してくれて、いつか笑いながら思い返す……。

倦怠期って、そういうものだと、僕はずっと信じていて。

こんなに突然、終わりが来るなんて――



18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 21:42:31.17 ID:znHb/B490
支援

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 21:44:01.39 ID:YFKrH/cs0

ξ゚听)ξ「てゆーか」

ツンがその顔を嫌悪感で歪めた。

ξ゚听)ξ「もうイヤなの。なに? 別れるって言われて何も言いかえさないわけ?
     もしかしてあたしのこと嫌いだったとか? それだったらちょうどいいじゃない。
     後腐れなく円満解決」

(;´・ω・`)「ちょ……ちょっと待ってよ。僕は――」

ξ゚听)ξ「なによ、今さら何か言うつもり?
     いっつも受け身受け身で、最近は電話もしてこなかったくせに。
     今になって彼氏気取り? やめてよ、気持ち悪い」

(´・ω・`)「……」

吐き捨てるような言葉に、僕の心が震え出す。
世界が輪郭を失っていく。

僕が……なにか悪いことをしただろうか。

僕はいつだって彼女の望むままに動いた。
望まれたときは傍らに立ち、そうでないときはできるだけ干渉を控えた。

そんな距離感を、ツンは以前、“優しい”と表現した。
しかし今となっては優しさもただの受け身。

僕は何も変わっていないのに、ツンの中で意味だけが変わった。


20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 21:45:49.71 ID:YFKrH/cs0

ツンは寂しかったのか?
本当はうざったいほどの干渉を求めていた?

違うだろう……それは違う。
こんなのはただ身勝手なツンの言い訳だ。

要するに僕に飽きたんだろ?

……くだらない。僕は何一つ悪くない。

僕ばかりが我慢する理由なんて……どこにあるんだよ。

ξ゚听)ξ「じゃ、そーゆーことだから。もう二度と連絡してこないでね」

ツンは微笑みながら言った。

ξ゚听)ξ「バイバイ、元彼さん」

ツンが歩き出す。
僕の脇を通り過ぎ、迷いのない足音が遠ざかって……消えてしまうその前に、


21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 21:46:05.04 ID:znHb/B490
支援

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 21:46:55.07 ID:YFKrH/cs0


(´・ω・`)「電話しなかったのは僕だけ?」

ξ゚听)ξ「……はい?」

ツンの足音が止まった。
振り向いた僕を貫く視線は、磨かれたナイフのように鋭い。

それは彼氏と呼ばれる立場の男に向けられるべき視線ではなかった。
ツンは苛立ちや嫌悪感、負の感情の全てを視線に込め、僕に突き刺す。

ξ゚听)ξ「文句でもあるわけ?」

(´・ω・`)「あるよ」

問いかけの言葉を、僕は迷わず首肯する。
そして、攻撃する。

(´・ω・`)「じゃあ聞かせてよ。ツンは僕がどんな男だったら満足したの?
      受け身がイヤだって言うなら、じゃあ強気で攻めればよかったわけ? 違うでしょ?
      言い返したら言い返したで怒るくせに、全部僕の責任みたいに言うのはやめてくれないかな」


23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 21:48:41.88 ID:YFKrH/cs0

ξ#゚听)ξ「あ、あんたねっ!」

叫ぶように言いながら、ツンは僕との距離を詰める。
殴りかからん勢いで、

ξ#゚听)ξ「あんたがそんなだから嫌いになったんでしょ!
      普段は全部人任せのくせして、文句言われたら怒るなんて――」

(´・ω・`)「それはそっちも同じでしょ? 前は目的地まで全部決めてから僕をデートに連れだしてたくせに。
      今さら受け身とか言わないでよ。飽きたんでしょ? 僕に。だったらそう言えばいいだけじゃないか。
      こんな時だけ被害者ぶるの? ははっ、やめてよ。吐き気がする」

ξ#゚听)ξ「せ、せっかく気を使ってあげたのに!」

(´・ω・`)「僕はそんなこと頼んでないよ?」

ξ#゚听)ξ「うるさいわよ!」

ツンが右腕を振り上げた。
迷いなく振り下ろされたそれは、しかし目的地であるはずの僕の頬に辿り着くことはない。


24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 21:50:13.74 ID:YFKrH/cs0

ξ#゚听)ξ「は、放してよ!」

僕が腕を掴むと、ツンは悲鳴を上げた。
その悲鳴に僕は微笑む。心が解き放たれた気分……最高の気分だ。

(´・ω・`)「偉そうに責任転嫁しないでよ」

真っ正面から視線を受け止め、僕は言う。
ツンは汚物にでも触れたように暴れた。

ξ#゚听)ξ「うるさい! 放して!」

(´・ω・`)「随分な言い方だね。もしかして、新しい男でも出来たとか?」

ξ゚听)ξ「あ、あんたに関係ないでしょ! いいから放してよ!」

(´・ω・`)「関係ない、か……まぁいいよ。これで望み通り?」

言いながら、僕はツンの手を突き放した。
そして、


ξ゚听)ξ「えっ――」

ツンはバランスを崩した。ヒモの切れたマリオネットのようにその体は倒れ……、


25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 21:51:03.85 ID:znHb/B490
支援

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 21:51:24.29 ID:YFKrH/cs0

ξ゚听)ξ「あっ……」

悲鳴と共に、鈍い音が僕の耳に届いた。
見ると、ちょうどツンの頭の下に、堅そうなコンクリートブロックが落ちていた。

(´・ω・`)「……ツン?」

問いかけるが、答えは返ってこなかった。
僕はしゃがみ込み、彼女の肩に手を伸ばす。

だが、その手は止まる。

コンクリートブロックに、赤いシミが広がっていく。

ξ )ξ「……」

ツンの口元に手を当てると、呼吸が止まっていた。

つまり、死。

(´・ω・`)「……あぁ」

そこで僕は苦笑した。

(´・ω・`)「なんだ、夢か」



27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 21:52:32.63 ID:YFKrH/cs0

  ※  ※  ※


僕が家について三十分ほどで、雨が降り出した。
学校で友達から聞いたとおり、その勢いは強く、しばらくやみそうにない。

(´・ω・`)「……なんなんだ、今日は」

僕は部屋にいた。
制服を着替えるのも忘れて、膝を抱えていた。

(´・ω・`)「あれは、なんだよ……」

呟きながら、ついさっきの夢を思い出す。

それはいつもと変わらないパターンだった。
僕はつまらないことを理由に腹を立て、暴力をふるい……結果、相手が死ぬ。
相手の死に何も感じていていないのも同じだ。僕は平気で人を殺す。

――――そして、目が覚めて初めて後悔する。


28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 21:54:39.43 ID:YFKrH/cs0

(´・ω・`)「……頭、痛い」

さっきから頭痛がおさまらない。
今までにない激しい頭痛が僕を襲う。
学校を出るときのことも、本当はよく覚えていない。

僕は気付くと生徒玄関に立っていて、それから逃げるように美術室に戻り、制服の上着とカバンを持って学校を出た。家についてからは、ずっと部屋にいた。自分自身に対する恐怖からか、悪寒がいつまでたっても消えなかった。

(´・ω・`)「嫌いなわけ……ないのに」

僕は必死に呟く。
今にも否定され、失ってしまいそうな気持ちを言葉にのせる。

こんな夢をツンが知ったら……きっと、その時こそ、別れが来る。現実の、別れが。

( ゚∀゚)「兄貴」

(´・ω・`)「……えっ?」

ドアの向こうから、僕を呼ぶジョルジュの声が聞こえた。

時計を見ると、もう七時を過ぎていた。


29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 21:54:44.12 ID:znHb/B490
支援

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 21:55:45.67 ID:YFKrH/cs0

( ゚∀゚)「開けていいか?」

(´・ω・`)「あ、うん」

僕は慌てて立ち上がり、勉強机の椅子に腰を下ろす。
直後、ドアの開く音が聞こえ、

( ゚∀゚)「なに? もしかして勉強中?」

部屋に入ってきたジョルジュは、つまらなさそうにそう言った。

( ゚∀゚)「偉いねー。さっすが受験生だねー。俺には真似できねーや」

(´・ω・`)「別に……ちょっと考え事してただけだよ」

( ゚∀゚)「そうなん? まー、俺にはどーでもいいけど」

(´・ω・`)「どうでもいい、かな……」

棘のあるその言葉に苦笑する。
昔はもっと仲の良い兄弟だったはずなのに、と思いながら。


31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 21:56:44.53 ID:n6g4a4UE0
期待age

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 21:57:27.29 ID:YFKrH/cs0

( ゚∀゚)「飯は?」

ジョルジュは苛立ったような口調で言う。

( ゚∀゚)「母親、今日は遅いのか?」

(´・ω・`)「あぁ……そうだ。ごめん、忘れてた」

( ゚∀゚)「腹減ってんだよね。さっさと作ってくれないかな」

(´・ω・`)「……今、やるよ」

僕の心がまた少し震える。

いつも思う……ジョルジュが抱くこの感情は、僕にぶつけられるべきものなのだろうかって。
言うまでもないことだけど、僕はジョルジュの受験に、何一つ口を出したことはない。
全てはジョルジュと両親の間でのことであって、僕には何ら関係ないはずだった。

( ゚∀゚)「早くしてくれよ」

(´・ω・`)「……」

僕を急かすその言葉に、無言で立ち上がる。

制服のまま階段を下り、キッチンに立つ。
父親の単身赴任の関係もあって、僕は料理には慣れていた。
家庭科の調理実習でも、よく驚かれる。


33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 21:57:40.16 ID:gVXlgCSiO
wktk支援

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 21:58:46.99 ID:znHb/B490
支援

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 21:59:27.30 ID:YFKrH/cs0

( ゚∀゚)「偉いねー、兄貴は」

すぐ自分の部屋に戻ると思っていたジョルジュは、しかし居間のドアの前で足を止めた。
見下すような視線を僕にぶつけながら、

( ゚∀゚)「勉強も出来る、家事もこなせる。いやー、立派な息子さんだこと」

(´・ω・`)「……何が言いたいんだよ」

僕は振り向く。

(´・ω・`)「僕がジョルジュに何か言ったか? 全部父さんと母さんの――」

( ゚∀゚)「うざいんだよ」

ジョルジュは冷たい声で言い放った。

( ゚∀゚)「兄貴がそんな優等生だから、俺まで高望みされるんだろーが。
     比較される俺の気持ちがあんたにわかるか? わからんだろーが。
     ……わかって欲しくもないけどね」


36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:01:15.47 ID:znHb/B490
支援

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:02:27.00 ID:7F+YjKtvO
しえん

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:02:43.11 ID:YFKrH/cs0

(´・ω・`)「じゃあ突っかかってくるなよ。僕は僕で普通にしてるだけだ」

( ゚∀゚)「そーだよね、兄貴は生まれながらの出来る人だもんね」

(´・ω・`)「……そういうことは努力してから言ってよ」

( ゚∀゚)「はん? 説教? やめてくれよ。
     兄貴からの説教なんて、一番聞きたくねーよ」

(´・ω・`)「……」

( ゚∀゚)「早めに頼むぜー、晩飯。
     俺、寝てるかもしんねーからさ、そん時は起こしてな、お兄ちゃん」

言って、ジョルジュは居間を出た。


39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:03:21.90 ID:YFKrH/cs0

僕はキッチンに向き直り、鍋に水を入れてコンロにかける。
火がはぜる低い音を聞きながら、冷蔵庫の中から豆腐をとりだす。

(´・ω・`)「……」

流し台の上にまな板と包丁を用意し、そこで少し迷う。

どっちから先に済ませるか……夕食の準備か、苛立ちの解消か。

(´・ω・`)「そうだな……そっちの方が効率いいし」

僕は包丁を持ち、コンロの火を止めた。





40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:03:28.00 ID:znHb/B490
支援

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:06:04.62 ID:YFKrH/cs0

ノックもせずに、ジョルジュの部屋のドアを開ける。
マンガを読んでいたらしいジョルジュが、緩慢な動作で後ろを振り向く。

僕の顔を見、心底苛立ったというように顔をしかめ、

( ゚∀゚)「おい、なに勝手に――」

その声が止まった。
僕の手に握られた包丁を見たのだろう。

(;゚∀゚)「あ、兄貴? ど、どうしたんだよ、そんな危ねーもん持って……」

(´・ω・`)「僕がずっと誉められるだけだったとでも思ってるの?」

(;゚∀゚)「な、なに?」

(´・ω・`)「自分だけ自分だけ……ってね。
      駄々をこねるなら相手が違うんじゃない?」

言いながら、僕はジョルジュとの距離を詰める。
慌ててジョルジュは立ち上がった。その顔から血の気が引いていく。
普段の、不遜なほどに余裕の溢れたジョルジュにはない、本気の表情。

本気で僕を怖れる……そんな顔。


42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:08:39.70 ID:VjGJuLfz0
支援

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:08:41.34 ID:+gUdHtgaO
支援

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:09:31.05 ID:znHb/B490
支援

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:09:56.38 ID:YFKrH/cs0

(;゚∀゚)「や、やめろよ! なんなんだよいきなり!」

(´・ω・`)「僕が傷つかないとでも思ってるなら、大間違いだよ。
      これでも色々大変なんだ……本当に、いろんなことがどうでもよくなるくらいに」

(;゚∀゚)「落ち着けって! なぁっ! こんなコトしたら、受験とか――」

(´・ω・`)「うるさいよ」

僕は包丁をふるう。
ジョルジュの着ていたシャツの胸元が切れ、そこから血が飛び散る。
僕の着る真っ白なワイシャツに、どす黒い血が染みこんでいく。

(;゚∀゚)「あ……あに、き……」

(´・ω・`)「もう聞きたくないよ、そんな言葉。
      全部自分のせいだって、本当はわかってるんだろ?」

(;゚∀゚)「わ、悪かったよ! 謝るから――」

(´・ω・`)「随分調子いいじゃない」

(;゚∀゚)「あっ……」

ジョルジュの左腕に新しく赤い筋が走る。


46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:11:11.52 ID:znHb/B490
支援

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:11:46.99 ID:YFKrH/cs0

(´・ω・`)「どうしたの? 自分の美学守る根性もないの?」

問いかけながら、僕は手についたジョルジュの血を舐める。
空気に触れたせいか、少し粘り気を帯びたそれは、舌先に強烈な快感を与え、消えていく。

(  ∀ )「……兄貴、てめぇ」

ジョルジュの視線が僕の顔に定まった。
戸惑いはゆっくりと姿を消し、やがて純粋な怒りがその表情を彩る。

(;゚∀゚)「やってくれんじゃん……兄貴も」

(´・ω・`)「なに? やっと本気になった?」

(#゚∀゚)「黙れこらぁっ!」

ジョルジュが殴りかかってきた。
僕のワイシャツの胸ぐらを掴み、拳を振り上げ……

そして、動きを止めた。


48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:12:30.67 ID:GD7xC68/0
支援

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:13:12.91 ID:YFKrH/cs0


(´・ω・`)「……」

(  ∀ )「あ……あに、き……」


苦しそうにしゃべるジョルジュの喉元に、包丁が深々と刺さっていた。
今際の淵でジョルジュが見たのは、たぶん僕の微笑みだっただろう。


(  ∀ )「な、ん……で、だよ……」


徐々に光を失っていくジョルジュの目から、涙がこぼれ落ちた。



50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:14:12.68 ID:znHb/B490
支援

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:15:46.51 ID:YFKrH/cs0

  ※  ※  ※


外から響く雨音が、いよいよ強さを増してくる。
気付くと、僕は真っ暗な居間の隅にいた。

(´・ω・`)「……夢、だよ。……夢に決まってる」

さっきから呪文のように僕は呟いていた。
体が震える。こんな感情を味わうのは初めてじゃないはずなのに……怖い。

静まりかえった家、消えたままの電気、作りかけの夕食……。
全てが、一つの結論を指し示しているようで、例えようもなく。

――怖い。

(;´・ω・`)「じ、時間、は……」

ふるえる声で呟いて、僕は居間の時計に目を向ける。
蛍光塗料の塗られた長針と短針が、ちょうど午後の十一時を指す。

(´・ω・`)「……母さん?」

僕は呟く。
誰かの存在が欲しい。笑って否定して欲しい。
悪い夢を、見ただけだと。

僕は立ち上がる。


52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:16:45.39 ID:Gtysw1ba0
これはおもしろい
支援

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:17:17.33 ID:YFKrH/cs0

その時、

(´・ω・`)「あ……」

玄関が開いた。

(´・ω・`)「母さんっ」

ほとんど叫ぶように言って、僕は居間を出る。
明るい電気のついた玄関に、母親はいた。

でも、

J( 'ー`)し「……なに? 何か用でもあるの?」

僕を見る母親の視線に、優しさなんて微塵も含まれていなかった。

酔っているのだろう、ふらつく体を壁に手をついて支えながら、

J( 'ー`)し「用があるなら明日にして……今、気分悪いの。
      晩ご飯もいらない。……お母さん、寝るから」

(´・ω・`)「あ、母さん、僕、話が――」

J(#'ー`)し「明日にしてって言ってるでしょ!」

母親は叫んだ。
長い髪の毛をぐしゃぐしゃにかきむしって。


54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:17:33.07 ID:CZ/ARRhn0
こういう話好きだ

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:18:04.93 ID:+gUdHtgaO
うわぁぁぁぁ

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:18:35.46 ID:znHb/B490
支援

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:18:45.10 ID:YFKrH/cs0

J(#'ー`)し「わたしの何が悪かったって言うの!?
      プレゼンの前まではヘラヘラ笑ってたくせに……落ちたら全部わたしの責任!?
      ふざけないでよっ、昨日まであんなに持ち上げといて!」

(´・ω・`)「……母さん、僕、聞いて――」

J(#'ー`)し「あんたは勉強でもしてればいいのよっ!」

(´・ω・`)「……」

僕はやっと思いだした。
機嫌が悪いときの母親を。

J(#'ー`)し「あんたは勉強してればいいのよ……そうよ!
      そしていい大学に入りなさい。どうせ社会は学歴なのよ。
      そうじゃなきゃわたしがあんな俗物に負けるはずがない……。
      ショボン、わかってるの!? ジョルジュはもうダメなんだから、あなたしかいないのよ!」


58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:21:44.99 ID:EU+LQVTcO
しえん

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:22:16.21 ID:YFKrH/cs0

母親は僕のことを見ようともせず、階段を上がり、自分の部屋へ向かった。
悲しみや後悔がすごい勢いで僕の心に広がっていく。

こんないびつな家族が他にあるだろうか。
言葉通りの仲良し家族ごっこ。
出演者の機嫌が悪くなれば、そこで芝居はおしまい。

仮初めの刹那に見せるそれは……まさに夢。
どれだけ僕が頑張ったところで、簡単に終わりは来る。
いつか消えるとわかっていたら、そんなもの、僕は望んだだろうか。

こんなにもくだらない、虚像……虚ろに象られた幻。

(´・ω・`)「……じゃあ」


――――壊そうか。



60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:22:16.96 ID:5NQ8DT6gO
たけしはワンパターンだな

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:24:11.47 ID:YFKrH/cs0

(´・ω・`)「聞いて欲しいことがあったんだ」

J( 'ー`)し「――えっ!?」

背後から声をかけると、よほど驚いたらしく、母親は勢いよく振り向いた。
驚きのせいか、それともアルコールのせいか、母親は口元を押さえ、目を見開いて僕を見る。

J( 'ー`)し「ショボン! あなた、ビックリするでしょ!
     いきなり声かけるなんて――」

(´・ω・`)「聞いて欲しかったんだ、僕」

J(;'ー`)し「な、なんなの? あなた……どうかしたの?」

(´・ω・`)「もう遅いよ」

僕は呟く。
だって僕には見えてしまった。

母親だから愛してくれるはず? くだらない理想論だよ、それは。
人が何を愛し、何を大切にするかなんて、そんなの本当に十人十色なんだから。


62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:25:19.05 ID:YFKrH/cs0

母親は僕を求めていない。
求めるのは、社会に対する自分の憂さを晴らしてくれる、誰か。
別に僕でなくてもかまわないということ。

求める条件を満たすことが重要で、求められた条件以外のものは、全て無価値。

そんな人に、僕が何を求められるだろう。

そんな人のために、何を耐える必要があるだろう。

(´・ω・`)「僕のこと、サンドバッグか何かだと思ってたのかな、母さんは」

J(;'ー`)し「ショボン……なに言ってるの? あなた――」

(´・ω・`)「僕はなに?」

J(;'ー`)し「えっ……」

(´・ω・`)「母さんにとって、僕はなんなの?」

J(;'ー`)し「……」

母親は沈黙した。
しばらく待っても、答えは返ってこなかった。


63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:25:34.72 ID:5NQ8DT6gO
わざわざたろおの日に被せてかよ

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:27:22.46 ID:0VhEDCNzO
支援

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:27:25.20 ID:O3Ox+DQy0
支援

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:28:49.35 ID:YFKrH/cs0

(´・ω・`)「……無言が答え?」

J(;'ー`)し「えっ……」

(´・ω・`)「答えられない、か……」

どうしようもなく笑えた。
無回答という解答、最高じゃないか。

(´・ω・`)「ははっ! よくわかったよ!」

J( 'ー`)し「しょ、ショボンっ――」

僕は両腕をつきだした。母親の喉元を狙って。

J(;'ー`)し「あっ……な、たっ、なにを――」

(´・ω・`)「答えられないんだね。
      せめて一言くらい、僕の存在を肯定する何かが欲しかったけど、それさえも高望みだったんだね」

J(;'ー`)し「や、めなさ――」

(´・ω・`)「もういらないよ、親としての言葉なんて」

僕は腕に力を込める。
強い力で押されたせいか、母親が背にしていたドアが開いた。
僕達は折り重なるように倒れ込む。それでも手は放さない。
馬乗りになり、さらに体重をかける。


67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:32:20.12 ID:YFKrH/cs0

(´・ω・`)「これでも必死に頑張ってきたつもりだった……。
      見てくれてると思ってたんだよ。甘いよね、僕は。
      でも……たぶん僕は、信じてたんだよ。母親なら、ちゃんと見ていてくれてるって」

J(;'ー`)し「……しょぼ、んっ」

(´・ω・`)「必死だったんだ。ここが僕の限界だった。
      わからなかったかな? ……わからないか。
      自分の代用品を求めていたあなたには」

J(;'ー`)し「は、はなしっ、て……」

(´・ω・`)「最後にもう一回聞くよ。僕って、母さんにとってなんだった?」

問いかけて、僕は手を放す。
母親は真っ赤な目で僕を睨みつけ……、


68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:32:49.02 ID:YFKrH/cs0

(´・ω・`)「やっぱり答えられない?」

J(;'ー`)し「……」

(´・ω・`)「じゃあもう――」

J( 'ー`)し「じ……」

(´・ω・`)「……えっ?」

母親の口が動いた。
苦しみに歪んでいたはずの表情が、何故か微笑みを形作って――――


J(;'ー`)し「きまっ、てる……で、しょ。じま……ん、の……息子、よ」




69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:36:02.92 ID:YFKrH/cs0


――目が、覚めた。


(;´・ω・`)「うわぁぁぁ!」

僕は走った。
全てから逃げるように居間から飛び出し、洗面所に駆け込む。

(;´・ω・`)「う、げぇ……うぅあぁっ!」

嘔吐感がこみ上げてくる。
蛇口を目一杯に開き、大量の水で胃液を流しながら。

(;´・ω・`)「……こ、これはなんだよっ!」

精一杯の声で叫ぶ。
全て夢であるはずだった。だって現実の僕があんな感情を肯定するとでも?
そんなことあるはずないじゃないか。僕はツンのことが好きだ。
僕が嫌われるとかそういう問題じゃなく好きだったんだよ!

ジョルジュだって同じだ。
あんなのただのわがままじゃないか。それくらい僕だってわかってるさ!

母さんだって……母さんだって疲れてただけだろう!?
あれくらいで僕が逆上するはずがない。するはずがないんだ。
だって全部夢だ。夢なんだよ、そうだって言ってくれよ!
こんなのは全て幻でまた目が覚めたら平和な現実が待ってるって――、


70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:37:15.47 ID:O3Ox+DQy0
支援

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:37:54.94 ID:YFKrH/cs0

(´・ω・`)「あ……」

顔を上げた僕の目に、それは飛び込んできた。

鏡に映った、僕のワイシャツに滲む……赤黒い斑点。

(´・ω・`)「血……」

血の色。

飛び散った、ジョルジュの血。


(´゚ω゚`)「うあぁぁぁっ!」




72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:38:38.35 ID:0VhEDCNzO
wktk

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:40:51.19 ID:YFKrH/cs0

  ※  ※  ※


家を出た僕は、気付けば近くの橋の上にいた。
激しく降る雨のせいで、川は増水している。
いつもより量の多い水が、激しく下流に流れていく。

(´・ω・`)「……僕は、なんだ」

体を濡らす六月の雨も気にならなかった。
もう全部終わった気がした。たくさんの大切にしたい人を殺した。

僕が、僕自身の手で、殺したんだ。

夢の世界じゃない、現実の世界で。

殺すほどの理由なんてどこにもなかったはずなのに……僕は、殺した。


74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:41:40.73 ID:YFKrH/cs0

(´・ω・`)「一番に死ぬべきは……僕じゃないか」

顔を濡らす雫をぬぐう。
深夜の川は、真っ黒なうねりとなって、全てを押し流していく。

体が冷たい……寒い。
雨を吸ったシャツが、重く僕の両肩にのしかかる。

血の付いたワイシャツは、どこかで脱ぎ捨てたらしい。
無我夢中だったけど……それは正解だ。
もう二度と、あんなものは見たくない。
 
せめて、最後くらい、汚れない自分で――、

(´・ω・`)「……」

遠くでサイレンの音が聞こえる。


僕は、黒い濁流に向かって飛び降りた。




75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:42:46.16 ID:YFKrH/cs0

――…


記録的な大雨の降った、その翌日。

J( 'ー`)し 「ショボン! いい加減に起きなさい!」

大きな声をあげながら、母親である彼女は階段を上がった。
普段ならとうに起き出してくるはずの息子が、まだ姿を現さないのだ。

J( 'ー`)し「もう、あの子は……制服に油絵の具なんてこぼして。ショボンっ!」

もう一度大きく言って、彼女は息子の部屋のドアを開ける。

そこには

J( 'ー`)し 「ショボン――えっ? ショボン? どこに……ショボン!?」

そこには、誰もいなかった。



76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:43:27.83 ID:YFKrH/cs0




 Q 夢と現実の境界線って、どこにあると思う?

 A 僕は、現実と認識したその瞬間から、夢は現実になるんだと思うよ。



(´・ω・`)ショボンが悪夢を見るようです 終



77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:44:56.76 ID:DfpQTULh0


78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:44:58.97 ID:RYQpuqBBO


才能ありすぎ…

79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:45:23.48 ID:IAEXzAijO


80 名前: ◆YnecR1MhsM :2007/10/03(水) 22:45:24.29 ID:YFKrH/cs0
以上で終わりです。お疲れ様でした。

81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:47:59.51 ID:6gMi3kEGO
すごく面白かった
乙です

82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:49:07.56 ID:GD7xC68/0

こーゆー話って結構好きだ

83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:50:21.00 ID:0VhEDCNzO
>>1
凄い才能を感じたぜ…
面白かった

84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:54:43.07 ID:ZE5GHuNqO
最後イミフ

85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:58:26.37 ID:6PGE74rU0
すげえ
でも最後がよく分からんかった

86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:58:48.67 ID:EU+LQVTcO

おもしろかた

87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 22:59:17.11 ID:O3Ox+DQy0


88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 23:01:42.84 ID:vO3q7c9UO
>>1
面白かった、何か世にも奇妙な物語にありそうな話だな

>>81
夢の出来事でも現実の出来事だと思えば、それは現実の出来事になるってことじゃない?

89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 23:03:19.72 ID:GD7xC68/0
>>84-85
自分の夢が影響を及ぼせるのは、
自分だけみたいな感じじゃないかと思う



90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 23:09:24.08 ID:i9XVlu+f0
乙です

91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 23:11:34.98 ID:Ye/FzoJVO
>>80
今まで見たノンプロの創作の中で1番引き込まれた。
微かに血の臭いがする冷めた空気、でも凄惨さも陰鬱さも無い奇妙な清々しさ、構成もさることながら、高い文章力に参りましたm(__)m

92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 23:16:32.41 ID:n5ax35HJ0


93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 23:24:17.51 ID:7F+YjKtvO
紫煙

94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 23:24:55.14 ID:EHWV95CXO
>>1の才能に嫉妬 

激しく乙

95 名前:挫折の物書き :2007/10/03(水) 23:31:26.19 ID:t0iZKOw+O
>>1の文章は簡潔なのに場面が映像として思い浮かび読者を引き込む才能を感じた
乙でした

96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 23:35:55.67 ID:ITEcJZd9O
自分が書いた小説窓から投げ捨てた

面白かった!乙

97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 23:36:07.07 ID:vM1b6IZg0
面白かった。乙

98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 23:36:08.99 ID:XCukdTI80
中々面白かった


99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 23:39:17.27 ID:VWxMnCAJO
乙           しかし鬱になった

100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 23:45:08.45 ID:CZ/ARRhn0

久し振りにいいもの見させてもらった

101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/03(水) 23:45:37.64 ID:NByCWTPn0
これは閲覧注意


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